@yuing__ の話

鬱になって休職したあと退職した人がtwitterでつぶやかないことを書きます。

残り香

匂いで思い出せる記憶って色鮮やかで鮮明で一瞬まるでそこに戻ったかのような感覚にさえさせてくれることがありませんか?でもその答えにたどり着くのが本当に難しくてなんだっけこの匂い…そう思っているうちに別のことに目が行ってしまって匂いのことなんて忘れてしまう。それの与えてくれる情報は衝撃的なのに朧気なそれへの関心は低くかわいそうに思えますよね。

何でこんな話をしているかというと最近お母さんからおばあちゃんの遺品の着物をたくさん売ったら1万もいかなかった。6000円だって。お父さんにどうせ着ないんだからいらないだろ金になっただけマシだといわれたからそのまま売っちゃった。二日ぐらいの食費にしかならないよね。そういうメールが届きました。

おばあちゃんは大和撫子を自で行く方でした。当時は軽視されていた女性の通学にも親が力を入れたおかげで教養もしっかりして己を持つ素晴らしい人でした。悲しいことに私とおばあちゃんとの記憶はほとんどありませんがほんの少し覚えているおばあちゃんの姿は今でも思い出せます。きれいな石ころを拾ってたまに眺めるような感覚です。

そんな人の趣味が着物。着付けはもちろん、冠婚葬祭はすべて着物。新品の喪服もたくさんありました。それでもあの値段だったそうです。

そのメールを見て私は真っ先に自分の部屋のクローゼットを開けて2つの紙に包まれた着物の帯を見ました。一つはお母さんの成人式の時に使った帯。ぞんざいに扱われている割にいとおしそうに眺めていたのでほしいものを持っていきなさいと言われたときにこっそり回収しておいたものです。案の定着物は売ってしまったらしいです。

もう一つは私が勝手に気に入った黒と金の帯。グラデーションのようになっていてとてもきれいなんです。それを少し見た後また紙に包んで戻しました。

あまり開けていると消えてしまうんですよ、匂いが。帯からはもう売られてはいることのなくなった祖父母の家の匂いがします。昔の家の匂いです。いろいろあってリフォームさせられてしまいましたがその家の中になにがあったかどこにだれがいたか。匂いだけで思い出せるんです。亡くなったおじいちゃんの声が聞こえます。わからなくなるからと壁いっぱいに画びょうをさしてそれに鍵やメモ用紙を引っ提げて。何十年前にかったかわからない白い電話機は黄ばみきっていて。ソファには毛布が2枚かけられていて。キッチンも使っていないのにやけに物が多くて。窓からは趣味でやってたらしい小さい畑と木々が見えて。廊下を挟んで向こうの部屋はほとんど使われることのなかったおばあちゃんの部屋があって。ピンクのじゅうたんに日の当たりにくい窓。姿見があって衣装ケースが雑に置かれていました。

廊下の左奥はおじいちゃんの部屋があります。カセットテープだらけだったはずですがほとんど足を踏み入れることが許されなかったのであまり覚えていません。右には仏壇がありました。仏壇といっても宗派がわからなかったのかなんなのか私の曾祖父母と思われる写真が立てかけられてその前に線香をたてるものがあって果物を添えられているだけのものでした。

お正月は決まって弟とそこで遊んでいました。緑の電気ストーブの近くで一緒にテレビをみていました。畳の6畳の部屋でした。あそこにあったものも全部なくなったんでしょう。

帯の残り香がそれらを思い出させてくれます。いつもお墓に手を合わせに行っていたことを、納骨式の時のあの姿を、死ぬ1か月前の弱弱しい姿を、最後の最後に私をちゃんとした名前でよんでくれていたらしいこと(ずっと間違えておぼえていたんです)棺の左頬あたりにピンクの花を添えたこと。

いつ忘れてしまうんでしょう。忘れるというのは恐怖です。そして人は真っ先に声を忘れていきます。なのでまず呼ばれていた声を思い出そうとします。残り香はまだ教えてくれます。お母さんを呼んでいた時の声ですが。

もうそのにおいを再現して作ることはほぼ不可能です。最先端の科学を使えば可能かもしれませんが少なくとも日常の何かしらで構成することは不可能です。必要とする人がいなくなったら先日の私のように大量に捨てていくオチなのです。それでも私はそれを取っておいてよかったと思っています。私にはまだ価値がある。数字にされないほどに必要な記憶をその香りは思い出させてくれる。忘れてはいけないことを思い出させてくれる。もうないものをそこにあるかのように示してくれる。匂いは時に人の脳に焼き付きます。

それはそれとして世間一般にいわれるオタクは毎日お風呂にはいらないがちなのでせめてシャワーぐらいはあびてほしいです。老廃物の匂いにあなたを思い出してもいいのですか?

 

きつい話はおいておいて 今日はハローワークにいってきました。意見書を握りしめてこれからどうするかの話をしてきました。私がどういう性格なのか、なんでこうなったのか、体調のおおよそ、性格のおおよそをどうにかつたない言葉で伝えました。担当者のかたは本当にやさしくうん、うんとすべてを聞いてくれました。そのうえでこれからこうしよう大丈夫あなたならきっとみつけられますよと言ってくださいました。誰にでもいっていていいんです。私にもそれを向けてくれたことが仕事だとしてもうれしかったんです。会社ではだれも私に視線の一つ配ってくれたことはありませんでしたから。

ただやりたいことが見つからない。生きられるのならある程度のことはやります。と言ったら少し困った顔をしていました。まあそうですよね。自分でも結構考えたんですがやりたい、となるとなあ…という感じです。結局月に2回ほど顔を出して求人を見ていこうということになりました。本当にやさしい方でカレンダーに書かれている予定もびっちりでした。いろんな地域のいろんな人を助けてあげている仏のような人だと就労支援の方は言っていました。ボロボロになりながらもまだこういうすごい人とつながれるだけの縁があるということに感謝しました。あまりそれらしい進捗はありませんが頑張りたいと思います。

 

今日は着物の話がとてもショックだったこととハロワのことが書きたかったので満足です。というかタブレットPCでの入力があまりに面倒なのでそろそろ終わりにしたいと思います。もしかしたら加筆するかもしれませんがゲームを少し頑張らなくてはいけないのでそっちをやってきます。

寒くて昨日からストーブを稼働させていますが全国的に冷え込んでいるんですかね。風邪なんかひかないようにしてください。それでは。